東京ヤクルトスワローズ・山田哲人の“評価”が変わるかもしれない。
8月30日のDeNA戦、3番・二塁でスタメン復帰したが山田が2回、二死満塁の好機で右翼席に6号アーチを放った。同日は5打数4安打と大当たり、序盤で試合を決定づける活躍に「これまでとは違う!」との声も聞かれた。
「今季は上半身のコンディション不良で打撃不振に陥っていました。1試合4安打と爆発したので、試合後の表情も明るかったです」(スポーツ紙記者)
変貌は不振脱出だけではなかった。というのも、トリプルスリー・山田には「弱点」がある。昨季は打率こそ2割7分1厘だったが、打点98、盗塁33、本塁打35と、ほかでは申し分ない成績をおさめている。このまま国内FA権を取得すれば、その去就は今オフ、ストーブリーグにおいて最大の関心事となるのは必至だが、「残留か移籍なのか、本人はまだハッキリ意思表示していませんが、大幅な年俸増は期待できない」(球界関係者)との意見も出ていた。
山田は得点圏打率が低い。昨季の得点圏打率は2割5分6厘。昨季までの通算成績については、チームがリードしているときの「走者二塁」の打率は4割だが、1点ビハインドの場面での通算打率は2割6分3厘、1点リードの同打率も同じ数値。つまり、「ここで逆転」、「試合を決めてくれ」という勝負所では脆さを見せるタイプでもあるのだ。
昨季までチームを指揮していた小川淳司シニアディレクターがクリーンアップではなく、1番で多く使い続けたのもそのためだという。もっとも、昨季は110個の四球を選んでおり、チャンスには強くないが、出塁してチャンスメークをするタイプなのだろう。
「走攻守全て揃ったスラッガーです。チャンスにあまり強くないことは他球団も知っていいます。破格な年俸でFA移籍するのは難しいと評されるのはそのためです」(前出・球界関係者)
昨季の出塁率は4割1厘。規定打率に到達したセ・リーグ選手のなかで出塁率が4割を超えたのは、3人しかいない。1番バッターとしては“最高の選手”だが、山田の今季推定年俸は5億円。「主砲ではない、1番バッターに5億円強を払えるか?」という切実な評価もされていた。
こうした好機での脆さを知ると、試合を決めた8月30日の満塁弾は、山田の評価を上方修正させるかもしれない。
「ヤクルト球団が慰留するのは必至ですが、5億円以上の年俸を払い続ける資金力があるのかどうか? コロナ禍で1試合の観客数は上限5000人と決められており、非常に厳しい状況です」(ベテラン記者)
後半戦に巻き返せるかどうかは、好機に山田が打てるかどうかに掛かっている。しかし来季の構想を考えると、高津臣吾監督は山田の復調を素直に喜べないかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)