「御朱印ガール」ならぬ「御鉄印ガール」が現在進行形で、おそらくは発生しつつあるのだろう。全国のローカル鉄道40社が加盟する「第三セクター鉄道等協議会」が企画した、「御朱印帳」ならぬ「鉄印帳」がバカ売れなのだとか。
発案したのは、熊本県のくま鉄(熊川鉄道)の社長。各駅などで購入できる文庫本サイズ(2200円)の鉄印帳を携えて各鉄道を訪れると300〜500円で記帳してもらうことができ、40社全てを制覇したら“鉄っちゃん”の誇りとして制覇順のシリアルナンバーが記された「鉄印帳マイスターカード」(有料)がもらえるという。
加盟社は、北は道南いさりび鉄道(北海道)から南は薩摩おれんじ鉄道(鹿児島県)まで。連続テレビ小説でお馴染みとなったが、東日本大震災、昨年の台風などで一部不通となり、今年3月に全線再開した三陸鉄道(岩手県)や北陸新幹線の誕生で苦戦を強いられるほくほく線の北越急行(新潟県)、長良川鉄道(岐阜県)、土佐くろしお鉄道(高知県)などで、人口減少などで厳しい経営を迫られる鉄道が多い。
ところが鉄道人気は根強く、7月10日に発売後、22日の4連休から始まったGoToキャンペーンを待たずとも16日には21社で完売し、8月中に増刷する予定という。
「つい最近に協議会がまとめたところによると、各鉄道の直近の経営数字はコロナ禍もあって、33社が赤字といいます。もともと『まるで空気を運んでいるよう』と揶揄される赤字路線が多いので、鉄印帳の人気にほっと胸をなでおろしているのではないでしょうか」(社会部記者)
この「御〇印」ブーム、最近は他所にも飛び火している。同じく古きを愛する「城ガール」がハマっているのが「御城印」(ごじょういん)だ。ここ2〜3年で城主の花押や家紋を発行する城が増えているのだ。
始まりは松本城(長野県)で1990年頃からとされるが、始めた理由は不明とか。観光サービスとして何の気なしに始めたということか。会津若松城(福島県)や二条城(京都府)ではオリジナルの御城印帳も販売し、また、郡上八幡城(岐阜県)や唐津城(佐賀県)では売り上げの一部を熊本城復旧の寄付金に回している。
その他、北陸新幹線が開通したことで観光ブームに沸いた金沢では、古都らしく美術館(ミュージアム)が多く、「ごミュ印帖」なるものが。スタンプを集められる美術館は伝統工芸、芸能、音楽、美術、文学など17カ所。
シャレを利かせたのが「御酒印帳」だ。仕掛け人は1845年創業の京都の老舗紙卸商で、京都市内の御朱印帳や日本酒のラベルなどを手掛けているという。御酒印帳が公認した全国81カ所の酒蔵のラベルを左ページに張り付け、右ページが酒や酒蔵の感想、特徴などを書き込むメモになっている。
これからの夏本番シーズン、どうせならGoToトラベルで安くなるのだから、万全のコロナ対策を取りながら「御〇印帳」片手に全国を回るのも良いかもしれない。
(猫間滋)