「日本企業は耐えられる」玉川徹氏の発言が反発を呼んだトランプ25%関税、石破政権の交渉失速で広がる懸念

 米国のトランプ大統領が打ち出した「25%関税の日本全面適用」により、国内経済が大きく揺れている。

 複数の金融系シンクタンクは、関税が予定通り8月1日に発動された場合、日本のGDPは最大で0.8%減少するとの試算を発表。これは、2025年度の経済成長が全て帳消しになるほどの衝撃である。

 さらに、平均賃上げ率も今年の5.25%から、来年度は3%台へ落ち込む可能性があり、これにより内需の冷え込みや景気後退が現実味を帯びている。

 この衝撃的なニュースに対し、7月8日のテレビ朝日系「モーニングショー」で玉川徹氏が「日本企業は十分耐えられると思う」と発言。これがSNSや経済界で大きな反発を招いた。

 経営アナリストは、玉川氏の理論をこう批判する。

「彼は円安で企業が稼いだ分が消えるだけだというが、それは表面的すぎる。例えば、トヨタの利益が35%減っても企業としては潰れないが、下請け中小企業は壊滅的打撃を受ける。部品も米国生産にシフトすれば、日本国内の製造業全体が打撃を受けるのは確実だ」

 SNSでも、「トヨタは持ちこたえても、中小企業は大崩壊」「日産のような再建中の企業にとっては致命的」などの声が多数寄せられた。

 この25%関税の通告は、日本の参院選の公示とタイミングが重なったことでも話題となっている。霞が関関係者は「トランプ氏があえて石破政権に圧力をかけてきたのでは」と見る。

 交渉を担う赤沢亮正経済再生担当相は7回も訪米しているが、「主要交渉相手には面会すらできず“門前払い”が続いている」との声も出ており、交渉力への疑念が強まっている。かつて、安倍政権時代にトランプ氏から「タフ・ネゴシエーター」と称された茂木敏充元再生担当相との比較もされ、「今の交渉チームでは荷が重すぎる」との批判も。

 選挙が終わる7月20日以降、実質交渉の猶予は10日間しか残されていない。トランプ政権はすでにアジア初の関税妥結国として日本ではなくベトナムを選んだ。これは、日本への強い不信感の表れでもある。ただし一方で、米財務副長官が「交渉は進展している」と発言しており、トランプ氏の発言が“揺さぶり”である可能性も浮上している。

 関税交渉の失敗は、単なる経済問題にとどまらず、石破政権そのものの命運を左右する重大局面となる。玉川氏のように「耐えられる」と楽観視する意見もあるが、現実には多くの中小企業や労働者が生き残りをかけた岐路に立たされているのだ。

 今後の交渉の行方は、日本の未来を大きく左右する。

(文・田村建光)

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