スマート家電や動画ストリーミングサービスの普及により、家庭内のWi-Fi環境は以前にも増して重要性を増している。2025年現在、多くの家庭では「Wi-Fi 6」対応ルーターが導入され、より高速な「Wi-Fi 7」への移行も始まっている。しかし、こうした最新機器を導入してもなお、「繋がりにくい」「部屋によって速度が遅い」といった悩みを抱える人は少なくない。その原因の1つとして見落とされがちなのが、Wi-Fiルーターの「設置場所」だ。
Wi-Fiルーターは、360度全方向に電波を発信するが、その電波は障害物や他の電波との干渉に弱いという特性がある。理解しておきたいのは、電波にとって「大敵」となる3つの物質だ。
1つ目は金属。金属は電波を反射するため、ルーターの近くにテレビや金属製の棚があると、電波がうまく拡散されず、到達範囲が狭くなってしまう。
2つ目は電波を発する家電製品。特に電子レンジやコードレス電話は、Wi-Fiと同じ2.4GHz帯の電波を使用することが多く、干渉によって通信が不安定になる可能性がある。
3つ目は水。意外かもしれないが、水は電波を吸収する性質を持つ。水槽やウォーターサーバーの近く、あるいは紙類(本棚など)の中にルーターを設置すると、電波が減衰してしまう。
設置場所として避けるべきポイントも3つある。1つ目は床への直置き。電波は上下左右に広がるが、床面は鉄筋や断熱材による反射・吸収が起こりやすく、結果として通信範囲が限定されてしまう。ルーターは床から1メートル以上の高さに設置するのが理想的だ。
2つ目は部屋の角。四方を壁に囲まれた場所は電波が反射・吸収されやすく、効率的な通信を妨げる。
3つ目は窓際。ガラスは電波を通過させるため、通信リソースが室外に漏れてしまう。加えて、日光があたると熱がルーターの動作に悪影響を及ぼす可能性もある。理想は部屋の中央だが、現実的には壁際でもできるだけ部屋の中央寄りに配置するのが望ましい。
戸建て住宅では、ルーターを1階と2階のどちらに置くかも重要な判断ポイントになる。一般的に電波は下方向よりも上方向に届きやすいため、1階にルーターを設置すれば、上階にも電波が届きやすくなる。また、ルーターのアンテナを水平方向に向けるなど、機器ごとの推奨設定に従うことで、さらなる最適化が可能だ。
実際、Wi-Fi 6対応ルーターを「床置き・部屋の角・家電の近く」に設置した場合と、「高さ1メートル以上・部屋の中央寄り・障害物の少ない場所」に設置した場合とで通信速度を比較したところ、後者では最大2倍近くの速度向上が確認されている。
Wi-Fiの通信環境を改善する方法は、高額な機器に買い替えることだけではない。まずは、今あるルーターの設置場所を見直すことから始めてみるのが、もっとも手軽かつ効果的なアプローチだ。
(ケン高田)