大阪万博が引き起こす「重大事故」と「治安崩壊」(3)3キロの橋を歩いて避難

 では万が一、命に関わる状態に陥った場合、すぐに治療を受けることはできるのだろうか? 西谷氏は「期待はまったくできない」と断言する。

「会場内には救護所が8カ所あって、そのうち医師がいるのは3カ所だけです。しかも、具体的なベッド数も明らかにされていない。救急車を呼んでも、会場に車でアクセスできるルートが2カ所しかないので、渋滞に巻き込まれたら、なかなか現場に到着できない。だから、十分な処置を受けられず、命を落としてしまう人も出てこないとは限りません」

 西谷氏が言うアクセスルートとは、夢舞大橋と夢咲トンネルの2つ。交通の便が悪いことで懸念されるのは救急搬送だけではない。もしも大地震が発生した場合、大パニックを引き起こす確率が高い、と木下氏は懸念する。

「夢洲は建設残土や浚渫砂壌などで埋め立てた土地ですから、液状化現象を起こしやすい。もしも、大地震に見舞われたら、道路が液状化によって隆起してしまい、バスなどの車両で安全に避難することは難しいでしょう。しかも、トンネルと橋はそれぞれ全長が約3キロに及びますから、小さな子供やご高齢の方々が徒歩で渡ることも難しい」

 木下氏は、会場内で避難待機する際も万全の態勢が整えられておらず、不備が目立つという。

「ピーク時には、一日に22万7000人が来場すると予測されていますが、今のところ十分な避難場所が確保されているとは言えません。想定されているのが、催事室やパビリオンの他、驚くべきことに大屋根リングの下も候補に入っています。屋根こそありますが、野宿と何ら変わらない状況です。吹きさらしの状態の中、救助が来るまで何日も過ごせるとは思いません」

 公然と〝いのち輝く未来社会のデザイン〟というテーマを掲げながら、なぜこれほどまでに安全対策が杜撰なのだろうか。西谷氏はその原因をこう分析する。

「やっぱり、縦割りの組織だからでしょうね。自分たちが担当しているセクションのことは一生懸命に考えるけど、それ以外のことは後回し。しかも、寄せ集められた人たちですから、万博が終われば関係ないっていう気持ちもどこかにあるように感じます」

 3月5日には大阪府の吉村洋文知事(49)が、会見で万博のテストラン(予行演習)の無料招待に約35万人の応募があったことを明かし、

「落選された方も4月13日から開幕しますので、ぜひ万博会場にお越しいただけたら」

 とドヤ顔で話していたが、後世にミャクミャクと語り継がれる大惨事だけは勘弁してほしいものだ。

*週刊アサヒ芸能3月20日号掲載

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