「巨額詐欺男」がハマった「オンナとカネ」無間地獄(3)「愛人バンク」にハイソ女性がズラリ

「当時は、いわゆる『長者番付』がありました。そこに、私が載ってしまったのです。氏名だけでなく住所まで公表されていました(06年に公開廃止)。すると、様々な業者から郵便で自宅にDMが届くようになる。そんな中に『愛人バンク』があったのです。もちろん家族の目もありますから『女性を紹介します』なんて文面には書かれていませんよ。『会社の他に自分のオフィスを持ちませんか』という内容でした。場所は青山のカナダ大使館の近くで、自宅と会社の中間地点。当時の証券マンにとって、青山あたりに個人オフィスを持つのは、一種のステータスでした。私も飛びついたわけですが、いざ契約の段階で『紳士には淑女がお似合いです』と、200〜300枚ほどの女性の写真が束ねられたファイルを見せられたのです」

 当然ながら齋藤氏も驚きと怪しさを感じた。だが、自分は選ばれたという特別感が勝ったという。気づけば、ファイルをめくりながら、女性の品定めをしていた。システムは単純で1人の女性に会うために、業者に10万円の紹介料を支払うだけ。会ってみて相性が合えば、あとは女性との個別交渉。次回以降も自由恋愛で逢瀬を重ねていく。齋藤氏の「愛人バンク」遍歴は著書に詳しいが、政治家の元愛人、議員秘書、ゴールドマン・サックスに勤める女性などなどハイソな女性が並んでいる。

「まずは体の関係ですから、男性経験が少ない女性は避けました。おおむね27歳以上の女性から選んでいました。結果的に、それなりの職業に就いていることが多く、特に自分とは違う世界で活躍されている方とは話も尽きることなく、楽しかったですね」

 そんな齋藤氏が特段に貢いだ女性もいる。京都の名門女子高を出て、馬主の息子と駆け落ち。そのボンボンはクスリに手を出し、女性は風俗に身を落としていた。マユツバものの経歴にしか聞こえないが、

「風俗店の住み込み男性店員たちとタコ部屋生活を送っているというのです。そこから彼女を救い出さなくては─と思い、家賃60万円のマンションを借りて、資本金1000万円の会社を立ち上げて運用を任せ、BMWの車も買い与えました。阿部さんには『バカ丸出しだ』と一喝されましたが、あの時は仕事で得られない刺激を求めて、より危険な刺激に向かっていかざるをえなかった」

 前述のように、詐欺に手を出しても、なお齋藤氏の享楽の日々は続いた。女と同じくハマり、最高9000万円までかけて散財した外車を乗り回した。それは逮捕のカウントダウンが始まっても続いていた。

「あの頃に戻りたくはありません。愛人を囲って高級車を乗り回す。それがステータスと思えたのは最初だけで、最後の方は愛人も車も、自分が狂っていく、その現実からの逃避でしかなかったのですから‥‥」

 そんな窮地に陥った齋藤氏に近づいてきたのが詐欺師を騙すクロサギだった。そこでも酒池肉林の世界を経験することになる─。

齋藤栄功(さいとう・しげのり)1962年、長野県生まれ。86年に中央大学法学部を卒業後、山一證券に入社。同社の自主廃業後に信用組合、外資系証券会社を経て、医療経営コンサル会社「アスクレピオス」を創業する。08年に詐欺とインサイダー取引容疑で逮捕され、その後に懲役15年の判決を受けて長野刑務所に服役。22年に仮釈放された。

*週刊アサヒ芸能9月26日・10月3日号掲載

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