来年4月13日に開幕を控えた大阪・関西万博。約344億円を投じて建設中の巨大な木製リングや「動く心臓」、「人間洗濯機」などと並んで大きな目玉として注目を集めているのが、「空飛ぶクルマ」だ。万博を取材するジャーナリストが解説する。
「万博の公式サイトでは運航が予定されているアメリカのジョビー・アビエーション社、ドイツのボロコプター社など4社の機体を紹介していますが、いずれも形状はヘリコプターやドローンに近く、“空飛ぶクルマ”と大々的にPRしていることには違和感を覚えます。実際、フジテレビ系の報道番組で、言い出しっぺである橋下徹弁護士は、クルマとして陸上を走行できない点を指摘して、『有人ドローンと言うべき』と持論を展開。その隣で話を聞いた吉村洋文大阪府知事が『ドローンに非常に近いクルマ』と弁明していたのが印象的でした」
そんな中で万博版「空飛ぶクルマ」の権威を失墜させるようなニュースが報じられた。これぞ正真正銘の“空飛ぶクルマ”というべき「エア・カー」が、4月23日に初めて顧客を乗せて飛行に成功。開発したのはスロバキアのクライン・ビジョン社で、4つの車輪を持つ車体に翼を備えた見た目は、まさに陸空両用の自動車兼飛行機と呼ぶにふさわしいもの。
「車体はスポーツカーで、滑走路から勢いよく飛び立つシーンは未来を感じさせるものでした。この映像はネットニュースでも取り上げられましたが、そこまで大きな話題にはなっていませんでした。しかし、4月28日放送のTBS報道番組『サンデーモーニング』が、『可変型“空飛ぶ車”』と題して紹介。MCの膳場貴子アナが『プロペラの推進力で最高速度は時速300キロ』と説明。翼の部分を折りたたんで、陸上モードで走行する場面では『もちろん、自動車としても走ります』と紹介していました。高視聴率の人気番組だけに、影響力は大きく、ネット上では『空飛ぶ車の本家はスロバキア』『万博も形無しやね』『万博はただのドローン』などといったコメントが見られました」(メディア誌ライター)
なお、スロバキアも万博に出展予定となっているが、具体的な内容については公開されていない。いっそのことスロバキアに本家“空飛ぶクルマ”を出品してもらってはどうか。