大型車のタイヤ脱落事故が相次いでいる。
群馬県渋川市の国道で1月12日、走行中のダンプカーから左後部のタイヤ2本が脱落。直径約105センチのタイヤが猛スピードで転がり、歩道を歩いていた男性を直撃。男性は肋骨骨折、大動脈解離、肝臓損傷の重症を負った。
国土交通省によれば、昨年度に起こった「大型車のタイヤ脱落事故」は、過去最多の131件。その数は、ここ10年で12倍に増えているという。
「大型車のタイヤは重さ100キロ前後で、直径は1メートルほどもある。それが猛スピードで直撃すれば、当然命に関わります。国交省では2002年に横浜市内で起こった母子3人が死傷したタイヤ脱落事故をきっかけに、04年度から、8トン以上のトラックと定員30人以上のバスで起きた同様の事故集計を公表してきました。それによれば、11年度(11件)から増加し続け、昨年度は人身事故こそなかったものの、過去最多を更新。直近4年間でも約2倍に急増しています」(社会部記者)
データによれば、発生は冬に集中。昨年度は11〜2月に事故の3分の2が発生していることから、国交省では、冬用タイヤへの交換作業に原因があるとみている。ナットの締め付け不足や、一定距離を走行後に行う「増し締め」作業を怠った、あるいはスリップ防止対策のための融雪剤散布が増えていることが脱落を誘発した可能性も考えられるという。
とはいえ、10年で12倍に急増するなど、どう考えても尋常ではない。
「しかも、昨年起こった事故131件のうち125件、つまり95%が左後輪の脱落なんです。国交省は、『右折は左折よりもスピードが出やすく、遠心力により積み荷の重さがかかりやすいことなどが原因』と推測していますが、本当にそれだけなのか。一部にはタイヤの取り付け方式が変わったことによる、『国際基準によって生まれた事故』という声もあります」(同)
というのも、かつて日本では大型車のホイール規格にJIS方式を採用していたが、2010年に国際標準のISO方式へ全面的に切り替わった。つまり、それが事故を生み出す要因になったのでは、という指摘だ。
「JIS方式は日本独自の規格で、右側車輪のボルトは『右ねじ(右回し)』、左側は『左ねじ(左回し)』になります。一方、新採用のISO方式では左右輪とも右ネジ。つまり、左車輪が右ネジだと回転方向とネジの緩む方向(左回りに緩める)が一緒なので緩みやすく、左側通行の日本では、右折時に左車輪に強い負荷がかかるので緩みやすくなる、という推測です。ただ現段階ではこれについての検証データはないため、国交省、全日本トラック協会ともに、タイヤ交換作業や日ごろの確認作業の徹底を呼び掛けるにとどまっています」(同)
「国際基準」が及ぼした影響か、はたまた整備ミスなのか。いずれにせよ、一日も早い原因究明が急務だ。
(灯倫太郎)