「登板ゼロ」佐々木朗希に“影のコーチ”が浮上「井口監督も口出しできない」

 異例ずくめの「甲子園高校野球交流試合」が閉幕し、プロ野球シーズンもようやく折り返し地点に突入した。となれば、昨夏の高校球界を盛り上げた「令和の怪物」のデビュー戦を待ちわびるファンも多かろう。だが、実戦はおろかマウンドに立つ気配すらないが……。

「(1、2軍通じて)年間50イニング制限どころか、今シーズンの登板すら怪しいもんですよ」

「令和の怪物」が置かれた境遇を知るパ・リーグ関係者は、こう憂いの声を漏らした。

 大混戦のパで首位争いを続けるロッテだが、今季の目玉とされたドラフト1位ルーキー・佐々木朗希(18)の存在感が薄い。

 実は開幕前から1軍に帯同してはいた。だが、遠征にも同行しながら出場選手登録されることなく、慎重に慎重を重ねた調整の日々を過ごしているのだ。登板機会を求め、2軍に合流したことすらない。この現状を、スポーツ紙デスクが解説する。

「当初は5月26日のシート打撃で披露した160キロの直球や140キロ中盤のフォークに首脳陣はメロメロで、6月の紅白戦や練習試合での実戦デビューが決まっていました。しかし、万全を期すために実施したメディカルチェックで右肘の炎症が発覚してしまい、直後からノースロー調整に切り替わりました」

 年明けの合同自主トレから春季キャンプの期間に鍛え上げてきた、肩の状態はゼロに戻ったも同然だった。

 7月14日の札幌ドームでようやく報道陣を前に、およそ7週間ぶりにボールを投げる姿を見せたが、外野で最長20メートルの距離を山なりで60球程度放るのみだった。佐々木の練習風景を目撃した球界OBが語る。

「練習の強度自体は徐々に上がってるよ。最近は距離も30メートルぐらいに延びて、低い軌道のボールや変化球を交えるようになった。キャッチボールのパートナーは吉井理人投手コーチ(55)で、『専属コーチ』となって付きっきり。時折、フォーム指導するシーンも見られるね。ただ、日によってはメディアや評論家が球場入りする頃には引っ込んでしまうんだ。室内施設でトレーニングを続けているみたいだけど、球団広報も貝になって詳しい故障の状況や練習内容は教えてもらえない。まるでベールに包まれたままだよ」

 そんなこんなで、試合はおろかブルペンにすら立たない異例の「VIP待遇」が続いているのだ。

「佐々木は契約金1億円と年俸1600万円+出来高5000万円という満額、即戦力待遇で入団しています。それなのに練習以外の佐々木の仕事といえば、ブルペンにロジンバッグやドリンクキーパーを運ぶ荷物持ちぐらい。あとは、ロッカーや室内練習場で試合を見る程度です。現在のロッテはFAで入団した外様には手厚く、生え抜きにはかなり渋チンです。かたくなな1軍帯同に『登録されてないのに1軍最低保証年俸が来年も払われるのか』などと、やっかみの声まで上がっているほど」(球界関係者)

 故障の状況すらわからない中、トレーニングと下働きを繰り返す日々……。吉井コーチの指示だけに従っている様子なのだが、実は彼も伝達役にすぎないというのだ。その背景として、佐々木の育成に絶対的な権限を持つ「影のコーチ」の存在が浮上している。

「筑波大学野球部の監督で、野球の動作解析を研究している、川村卓准教授(50)のゴーサインが出ないとマウンドに立てないようです。実は吉井コーチは14年より同大大学院に在籍し、川村准教授に師事していました。大船渡高校の國保洋平監督(33)も同大OBで、川村准教授を師とし、高校時代から成長過程にある佐々木の体をチェックしてもらっていた。現在、キャッチボールをするにしても、体のデータを報告しながらOKが出た時だけ行っているようです」(パ・リーグ関係者)

 にわかには信じられない話だが、佐々木の育成に関して権限があるのはアマチュアサイドであり、井口資仁監督(45)や鳥越裕介ヘッドコーチ(49)はもとより、契約をして年俸を支払っているロッテ球団は口出しができないありさまだというのだ。その経緯は昨年のドラフト会議にまで遡る。

「佐々木サイドにとってロッテは意中の球団ではありませんでした。ロッテが交渉権を得ると、佐々木サイドは初交渉までに時間をかけてアメリカ行きも視野に入れていたといいます。結果、是が非でも金の卵を獲得したいロッテに対し、川村氏が提案する年度ごとのイニング制限や体作りに関する育成プランに従うこと、状態を報告してもらうために吉井コーチを橋渡し兼お目付け役とすることを条件に契約が成立したともっぱらです」(パ・リーグ関係者)

 ロッテと本契約を交わしたのはドラフト会議から1カ月以上たった11月末日。

「170キロを投げるスーパースター」を作り上げるため時間を費やし、慎重に育成するというアマ球界の夢をプロがのんだ構図となっているのだ。ただし、吉井コーチが佐々木に付きっきりとなれば、当然ながら他の投手たちの管理は疎かになってしまう。

「あまり目立ちませんが、ロッテ投手陣の防御率は4点台半ば(8月27日現在)で、首位争いをしているのが奇跡的なレベルです。吉井コーチも佐々木に構うばかりではなく、投手陣の立て直しに本腰を入れなくてはなりません。日本ハム時代には投手を守るために監督やGMとも言い争う熱血コーチだっただけに、研究に関しては一目置いているとはいえ、アマの先生の言いなりという状況には苦々しい思いでしょう」(スポーツ紙デスク)

 一方、ボロボロの投手陣を犠牲にしても、現時点でMAX163キロのポテンシャルを完成形に仕上げることは容易ではないようだ。

「佐々木が投げる160キロを超えるストレートは、高く足を上げて下半身のパワーを上半身に大きく伝達するフォームで成り立っている。ところが、上半身への負担は大きく、肩や肘を故障する原因になる。それに耐えうる体作りをしている段階だというのは理解できるが、どんなに体を鍛えても靱帯や関節は強化できないよ。だから体全体のバランスを鍛えてそこに至るという方法論を取るんだろうが、これに耐えられる体を手にするのにいったい何年かかるのかまったくわからない。ストレートだけ速くなっても試合が作れなければ使いものにならないからね」(球界OB)

 完成形が第三者には見えない、不可解な育成プログラムの成果が披露される日はいつ来るのだろうか。

スポーツ