「人生には様々な喜びがあり、同時に苦しみや悩みもあります」
こんなナレーションで始まるニッポン放送の「テレフォン人生相談」は1965年に放送スタートした長寿番組。健康問題から相続や借金などの金銭問題、さらには育児や介護にまつわるリスナーからの電話相談にパーソナリティと専門家が答え、解決策を導き出していくのだが、ときには相談者と回答者の間で意見が衝突し、「ガチャ切り」で電話相談を打ち切るケースもある。
リスナーの間で物議を醸したのは2月6日放送回。古参の構成作家が振り返る。
「相談者は20代の男性。職場での人間関係がうまくいかず、転職したいという相談内容でした。パーソナリティの心理学者・加藤諦三氏はコミュニケーション能力の不足を指摘し、その理由について小さい頃に母親から遊んでもらっていないのではないかと推測。その後、幼児教育研究家の大原敬子氏に代わり、長年続けている貯金を減らさないためにも、今の職場は辞めるべきではないと説得。大原氏が『お金貯まんないよ』と言うと相談者は『ちょっと考えます』と退職を踏みとどまっていたのですが…」
番組終盤、再び加藤氏のターンになると、「本当はお父さんとお母さんが仲良くなかったと思ってるんじゃない?」と問い詰め、相談者は「そんなことないです」と否定。その後、加藤氏が畳みかける。
「生きるか死ぬかのつもりで答えてください」
「自分に正直になるの。自分に嘘をつきながら他人とコミュニケーションができるようになるなんてことはないでしょう」
「立派なことを言おう、立派なことを言おうと思ってるから言うことがなくなっちゃうのよ。怖いんでしょう?」
問いかけに「はい、はい」と答えていた相談者だったが、加藤氏が「何が怖いの?そんなに」と語り掛けたところで、電話が切れて《プープー》という音に切り替わった。
「番組を聴いていたリスナーの多くはガチャ切りに衝撃を受けた様子で、ネット上でも『加藤先生追い込みすぎだよ』『転職の相談して父母の関係を聞かれたらキレるよ』などと同情の声が多く聞かれました。ただ、番組は事前収録で編集を加えたもの。長年パーソナリティを務める加藤氏は、時には1時間以上にわたって相談に乗ることもあると聞きます。ガチャ切りという結末になってしまいましたが、わずか20分の放送時間に凝縮するのは大変だったと思いますよ」(前出・放送作家)
2月3日から9日まではニッポン放送の「スペシャルウィーク」だが、この日の放送は多くのリスナーの記憶に焼きつく回になったようだ。