全国各地の道の駅や物産店で見かける手作り漬物の直売。実は、現在その多くが姿を消そうとしている。理由は2021年に施行された「改正食品衛生法」の存在だ。
これまで直売される漬物は、地元の農家や飲食店、個人などが製造しているケースが多かった。従来は保健所への届出が不要だったが、改正後3年間の猶予期間が終わり、今年6月からは申請が必要となるためだ。しかも、許可を得るのはかなり大変だ。
「自宅の台所や飲食店の厨房での製造はできなくなります。さらに作業スペースは四方を壁で囲まれた独立した空間にしなければならず、工程ごとの間仕切りなども必要です。壁や床の材質にも規定があり、食品の洗浄と手洗いの設備は別にすること、水道も蛇口タイプではなくレバー式といった具合に細かい条件が数多く設けられています」(食品業界紙記者)
つまり、製造許可を得るためには相応の設備投資が必要となり、これまで地元の道の駅などに卸していた量では採算に見合わない。ゆえに小規模な漬物製造業者のほとんどは猶予期間が終わるタイミングでの販売終了を考えており、すでに撤退した業者もあるという。
「ただ、漬物は食中毒リスクの高い食品で、13年には北海道で流通していた浅漬けからO157が検出。死者8名を出し、法改正のきっかけにもなっています。法改正前は誰でも参入できる状態だったため、衛生面からもルールの厳格化は仕方ないと思います」(同)
だが、これに頭を抱えるのが各地の直売所。漬物は人気商品のひとつだっただけに、店頭から姿を消すのは大きな打撃だ。
「地元企業の中には漬物を製造している業者はありますが、6月以降も同じ量を確保できるかは難しい状況です。そもそも人気のあった漬物の中には個人が製造していたものも多かったので…」(道の駅関係者)
お気に入りの直売漬物がある人は、今のうちに買い求めておいたほうがよさそうだ。