「NFT」とはネット上のブロックチェーンを活用することで、コピーが容易なデジタルデータに唯一無二な資産的価値を付与したもの。要はデジタルデータにアート作品のような価値が付いたものだ。これが今、「ふるさと納税」で人気なのだという。
「ウイスキーの銘柄にもなっていることで知られる北海道の余市町が、民間企業とコラボしてNFTを返礼品としたふるさと納税の寄付受付を10月21日から開始したのです。すると、わずか3分で3万円のNFT222点に寄付が集まり在庫切れになりました。NFTの内容は、白やピンクのウサギのキャラが余市町の特産品であるワインを持ったカードのような作品。保有者の特典として地元の人気ワイナリーのワインが買える抽選券も付いてくるというものです」(経済ジャーナリスト)
他にもNFTを返礼品とした自治体で検索すると38件がヒットする。その中には、ふるさと納税のあり方をめぐって国と訴訟にまで発展した大阪府泉佐野市もあった。
「ふるさと納税の返礼品は『地場産品に限る』とされているので特産品が豊富な自治体に寄付が偏る傾向にあります。しかし、NFT作品は特産品が多くない自治体でも、例えば泉佐野市のように地元の関空を入れたアート作品を作ることで出品が可能なため、返礼品として扱う自治体が増えたという経緯があります」(前出・経済ジャーナリスト)
もともと人気のふるさと納税と今流行のNFTが結びついた結果ということなのだろうが、実は、世界的に見ればNFTの人気は下火なのだという。
「コロナ禍以降にブームになったNFTは、ジャスティン・ビーバーやラッパーのスヌープ・ドッグ、ネイマール、マドンナが高額購入したことから人気が急上昇しましたが、21年をピークに人気は下降しています。アメリカのあるレポートでは、NFTの主なプラットフォームである暗号資産のイーサリアム自体が年初から60%も値を下げています。また、NFTの取引高も21年第3四半期以降88%も落ち込んでいるという数字もあるほどです。加えて、NFT作品には投機目的で転売されるという問題もはらんでいます。実際に余市町が提供した作品のうちいくつかは、寄付額の2倍の価格がつきました」(前出・経済ジャーナリスト)
ふるさと納税を管轄する総務省では、返礼品の転売は禁じていないものの、自治体支援という制度の趣旨から「望ましくない」という立場だ。
「取引高の低下」と「投機目的」という2つの問題が浮上する返礼品としてのNFT。とはいえ、今のところ納税者の反応は上々なのである。
(猫間滋)