一流ビジネスマンほど相手を「論破」しない理由

 いまは空前の論破ブーム。読者の職場にも相手を論破しないと気が済まないという困った人はいないだろうか。

 論破された際というのは往々にして後味が悪いものだが、人事コンサルタントは「一流のビジネスパーソンほど相手を論破して追い詰めたりしない」と解説する。

「仕事がデキる人ほど、議論では必ず相手に〝逃げ道〟を用意してあげます。なぜなら、ディベートの文化が定着していない日本では、意見の対立がそのまま人間関係の悪化につながりやすいためです。また、自称議論が強い人の中には、人格否定を得意としているケースも多く見られます。議論でエキサイトした結果、共感性のない人ほど『それって人としてどうなの』『仕事をナメるのもいい加減にしろ』など、議論の内容とは関係のないところで容赦なく相手を傷つけます。その結果、話の本筋が逸れて、優しい人は黙りこくってしまう。このように人を追い詰めて得意げになっている人ほど、最終的に損する可能性が高いのです」

 たとえば、周囲から面倒くさい人だと思われたり、コミュニケーションが減って必要な情報を共有されなかったり、困ったときに誰からもフォローされないなんてことも。

「たとえ1対1での議論なら絶対に負けない自信があっても、周囲から恨みを買って徒党を組まれれば勝てませんからね」(同)

 真のエリートは、論破が不毛であると知っているのかもしれない。

(橋爪けいすけ)

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