今年の12球団合同トライアウトの受験選手のなかで、元東京ヤクルトの風張蓮投手(27)がNPB球団との契約者第一号となった。DeNAが支配下でのオファーを出し、一気に契約まで結びついたそうだ。
「風張は今季、11試合に登板して防御率は7点台。でも、ファームでは防御率1・83(19試合)と無双状態。コントロールはアバウトですが、常時150キロ強の直球を投げ込むパワータイプの豪腕投手です」(在京球団スタッフ)
DeNAは今季57試合に登板した中継ぎのパットンが退団した。その穴を埋めてくれるリリーバーが欲しかったようだ。今季、二軍を指揮してきた三浦大輔監督は風張の無双ぶりも見ていたのだろう。横浜“再生工場”のお手並み拝見と行きたいところだが、問題なのは、東京ヤクルトのほう。風張に戦力外を通達した時点で、チームに籍を置く「2014年ドラフト指名選手」はゼロになった。しかも、その14年入団の最後の選手だった風張に、即オファーがあった。もしも来季に一軍で活躍しようものなら、スカウティングたけではなく、「育成にも問題アリ」と見られても仕方ないだろう。
「14年ドラフト組がオール戦力外。本来なら、入団6年目の今年、1人くらいはチームの中心選手になっていなければいけません。2年連続最下位の理由はこのへんにありそう」(ベテラン記者)
まず、同年のドラフトだが、当時の目玉選手だったのは、今オフ、日本ハムから米球界に挑戦する有原航平投手と楽天・安楽智久投手。他にも巨人・岡本和真、千葉ロッテ・中村奨吾、ソフトバンク・栗原隆矢(2位)、広島・薮田和樹(2位)などがおり、こうした顔ぶれと比べてもスカウティングの失敗は否めない。
「原樹理(15年)、寺島成輝(16年)といった好投手を1位指名していますが、怪我で伸び悩みました。今春のキャンプで昨年1位の奥川恭伸投手に対し、慎重すぎるくらい大切に扱ったのは、上位指名投手の怪我が相次いだためです。高卒投手の投げ込み数まで制限する内規までできました」(関係者)
怪我防止は重要だが、風張は18年に53試合に登板している。他に頼れる中継ぎ投手がいなかったとはいえ、この“酷使”が翌年以降に精彩を欠いた理由とも言われる。
「本拠地の神宮球場ですが、学生野球の聖地でもあり、シーズン中の練習施設の使用が制限されてしまいます。これがヤクルトの故障者の多さに影響しているのではないかという声もあります」(前出・ベテラン記者)
チーム再建を果たすためドラフト戦略だけでなく、練習環境も見直す必要もありそうだ。
(スポーツライター・飯山満)