敵地でのタイガース戦に「1番・投手」で出場した大谷翔平選手が8勝目を挙げ、さらに40号の特大アーチも放ってみせた(日本時間8月19日)。「投手・大谷」を「打者・大谷」が救う、まさに二刀流の醍醐味のような一戦となったが、この8勝目がペナントレース終盤戦における二刀流に影響を与えそうだ。
「今季のエンゼルスは投手陣全体の調子が悪く、とくに先発投手が揃って不振でした。トレード、マイナーから昇格など大幅に人員を入れ換えて、先発陣を立て直しました」(現地関係者)
同試合終了時点で、アレックス・コブが7勝3敗、ライセル・イグレシアスも7勝しているがクローザーなので、「大谷がもっとも安定している投手」といえそうだ。実際のところ、大谷は8月に入っての3登板で3勝を挙げている。今後、大谷に対戦カードの初戦など重要な試合を任せていくことになるだろう。しかし、こんな指摘も聞かれた。
「投手・大谷はたとえば中5日といった具合に等間隔では投げられません。打者・大谷も打線から外すことのできないピースです。他投手に対戦カード初戦を任せるよりも、大谷を先発させたほうが試合に勝つ確率は高くなりますが、打者としての翌日以降の体調を考えると、長いイニングを任せるのは得策ではありません」(在米ライター)
たしかに、「打者・大谷は登板翌日の打撃成績が悪い」といった傾向も見られる。しかし、投手・大谷を重要試合で登板させたい。ということで「投手起用にある程度、比重を置いた起用法」にシフトしていくことになりそうだ。つまり、投手として打席にも立つリアル二刀流の出場試合数は、終盤戦では少なくなる。
「本塁打王争いのライバルたちが失速ぎみなので、打席数が減っても大丈夫ではないかとエンゼルス首脳陣は見ています。なんとかして、大谷にタイトルを獲らせてやりたいと思っています」(前出・同)
もっとも、リアル二刀流には「弱点」もある。ヤンキース戦でKOされた7月1日(同)、大谷は「1番・投手」で出場したため、その後を任された救援投手にも打席がまわり、その都度、ジョー・マドン監督は代打を告げ、投打ともに“総動員”となってしまった。投手に比重を置くとなれば、指揮官は代打要員を余計に使いたくないと思うはず。
リアル二刀流の出場機会が少なくなるのは残念だが、大谷の防御率は7月以降、1.58と驚異的な数字を残している。トータルで2.79。まだ規定投球回数には達していないが、この数値を防御率タイトルに当てはめると、ア・リーグ2位。投手偏重の起用で、投手タイトル争いにも加わってくるかもしれない。
(スポーツライター・飯山満)