廃墟が好都合?「ゾンビでまちおこし」が各地でウケまくるワケ

 ゾンビで「まちおこし」をしようとしている自治体が増えている。
 
 例えば佐賀県を舞台にした少女アニメの『ゾンビランド・サガ』(MAPPA、エイベックス・ピクチャーズ、Cygamesの共同企画で、2018年10月から12月にかけてAT-Xほかにて放送)。話全体としては、ゾンビとして生き返った少女たちが、プロデューサーに導かれるままにご当地アイドルとして佐賀県を救うという話だが、キャッチフレーズは「私たち、生きたい!」で、佐賀については「存在自体が風前のともしびである佐賀」とまで言われている。にもかかわらず「自虐ネタについては全く気にしていない。それよりも……『30分×オール12話、オール佐賀』、良いPRになると考えていた」(県公報広報課)として企画に協力したのだという。

 アニメファンが作品の舞台となった土地に訪れる「聖地巡礼」はもはや恒例、佐賀県でもその狙いが当たったらしく、主人公の少女らが住む建物の舞台になった唐津市歴史民俗資料館や伊万里市のドライブインを訪れる人が急増。様々なコラボ商品も好評なようで、県も「反響の大きさを実感します」(同前)としている。

「ゾンビ村へようこそ」。人口700人あまりの山梨県小菅村が、村民がゾンビに扮したゾンビ映画さながらのPR動画「小菅村オブザデッド」をアップしたのが2017年11月。村民手作りの1日限定のお化け屋敷のオープンに合わせたものだったが、「面白過ぎる」と話題になった。

 中身は、小菅村を舞台にしたホラーゲームをプレーするという体裁で、途中「武器を手に入れる」「熊を倒す」「村長と話をする」といったコマンドの出るクエストをクリアしていきながら、自然と村中が案内されるというもの。実際の村長や村役場の人が出てきたり、小学校の授業風景まで出て来る。ちなみにライフの回復は、特産品のコンニャクだ。

 同じ山梨県で甲府市が行ったイベントが、2017年11月に行った、「オバケンゾンビパーク甲府」だ。こちらは県立青少年センターの提案から行われたもので、TAITOとお化け屋敷プロデュースを行うオバケンが共同で行った地域おこしプロジェクトだ。また、福岡市中央区の六本松商店街でも、2017年8月にゾンビを使った町おこしイベントを開催、ショートフィルム撮影やゾンビの街コンの「ゾンビコン」、スタンプラリーなどが行われた。

 地方の実情をよく取材する経済ジャーナリストによると、「近年、ゾンビを使ったまちおこしが増えている」という。そしてその理由はこうだと分析する。

「地方の衰退を逆手に取ることができるからです。シャッター商店街、空き家、廃墟ビルは逆に、ゾンビの世界観にふさわしい。本来は残念なものを、PR材料にできるというわけです。それにあまり真面目な観光PRをしても効果は少ない。それよりも、アニメやゆるキャラと組んで味わいのある建物を聖地巡礼の場にしたり、温泉や田舎の豊かさ、グルメなどをエンタメとして生かすことができれば伝播しやすい」

 また、あの一躍有名となった映画がヒントになっているとか。

「2017年に制作された『カメラを止めるな!』です。予算300万円という低予算映画ながら、SNSの口コミ効果で大ヒットしたのは記憶に新しい。限られた予算で何とか話題を作るという意味では、おらが町をPRしたいと考える地方自治体にとってはまさにお手本のようなケースです。それに、「カメ止め」がまさにそうですが、ゾンビって低予算でできるんですよ。俳優も衣装もいらない。ちょっとしたメイクでも出来ますからね」

 ただ、どこかで流行ったまちおこしが全国で乱立するのはよくあるパターン。要は、地域の特性次第ということか。

(猫間滋)

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