マジかっ!虫歯放置でガンになる(1)病気を促進する「ミュータンス菌」の恐怖

 様々な体の不調が現れ始める中高年層。命にかかわる病気を気にして、食事や運動など健康管理に努めている人も多いことだろう。が、ちょっと待った。実はもっと身近に命を狙っているヤツがいる。しかも口の中に。「たかが虫歯」と思うなかれ、油断大敵。大病を招く危険がひそんでいるのだ。

「まさか虫歯を放置していたことが原因で亡くなるなんて‥‥。驚いたと同時に自分は大丈夫か、と急に不安になってしまいました」

 そう話すのは会社員男性のAさん(53)。彼は最近、旧友をガン(ステージ4)で亡くした。その旧友の妻から「歯医者が苦手で虫歯を放置したのが原因だった」と聞かされ、ひどく驚いたという。

 実は昨年9月、北海道大学のHPに〈口腔内細菌による血管炎症はがんの転移を促進する~がん患者の口腔清掃の重要性を明らかに~〉というプレスリリースが掲載された。

 その中身は、大学院歯学研究院の樋田京子教授をはじめとする研究グループが虫歯の原因菌である〈『ミュータンス菌』により肺の血管炎症が誘導され、がん転移が増えることを解明〉したというもの。

 つまり、虫歯を放置していれば、〈ミュータンス菌が血中に循環している状態では、肺血管の炎症性変化がおこり、がん細胞の肺転移が増加する〉。

〝口の健康〟をおろそかにすると、取り返しのつかないことになる可能性があるということだ。

「人生が変わる歯の磨きかた」(河出書房新社)の著者で、国立長寿医療研究センター研究所・口腔疾患研究部の松下健二部長も、ミュータンス菌が原因となる大病について次のように話す。

「虫歯菌のミュータンス菌が脳出血を起こす性質があることはわかっています。そのミュータンス菌の中でも、cnm陽性ミュータンス菌というのがあり、ミュータンス菌と比較して虫歯を起こしにくい性質はあるものの、脳卒中を起こした患者の唾液から高確率で発見されているんです」

〝悪玉菌〟とも言えるcnm陽性ミュータンス菌は、脳出血を促進する能力があり、

「動脈硬化が進行した血管は脆くなっており出血しやすい。出血すると本来なら血小板が出血箇所を即座に塞いで止血を行う。しかしこの菌が止血反応を邪魔して、どんどん出血が進展してしまうのです」(松下部長*以下の「 」も同じ)

 その結果、脳出血に至るというのだ。 

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