日本の温泉にもいる!? 鼻から侵入して脳を食い尽くす「脳喰いアメーバ」の恐怖

 3月2日、フロリダで全米を騒然とさせるニュースが報じられた。

 なんと、脳を食べてしまうという恐ろしいアメーバ「フォーラーネグレリア」に感染した住民が死亡した、とフロリダ州当局が発表したのである。

 フロリダ州南西部シャーロット郡の保健専門家によれば、死亡した住民は水道水で鼻腔内を洗浄、そこからアメーバが侵入したという。

「この脳喰いアメーバは、湖や川、池、水たまりといった淡水や湿った土壌など自然界に普通に生息しています。プールなどにもいますが適切な塩素消毒がされていれば危険はありません。空気感染、飛沫感染はせず、口に入れたとしても胃酸で死滅します。ただ、唯一、鼻に侵入させてしまうと厄介なことになります。鼻から侵入したアメーバは死ぬことはなく、匂いを司る脳組織『嗅球』に入り、続いて脳の中枢に潜り込んで前頭葉を食い散らかすのです。結果、脳幹と脊髄が分断されるため、呼吸不全に陥り、97%以上の確率で死亡する。これが殺人アメーバといわれる由縁なんです」(医療ジャーナリスト)

 仮に感染してもアメーバが脳にたどり着くまでに対処すれば助かる可能性はある。3%未満の生存者はこのケースだ。だが、感染の初期症状は風邪と同様なので、大半は病院に行かず、アメーバが脳に到達し重症化してから救急搬送、手遅れとなって亡くなるケースがほとんどだという。

 米疾病対策センター(CDC)によれば、米国で1962〜2021年に、このアメーバに感染した患者は154人。しかし、生き延びたのはわずか4人だったとされる。

 では、日本ではどうなのか。実は、日本にもこの脳喰いアメーバは生息しており、実際に死亡者も出ているのだ。

「国立感染症研究所の発表によれば、日本で初の感染報告があったのは96年11月。被害者は佐賀県鳥栖市に住む25歳の女性でした。発熱後、頭痛や嘔吐の症状があり、その後、昏睡状態になって久留米大学病院救命救急センターに緊急搬送されたました。翌日に感染が判明しましたが、発症から10日ほどで亡くなったのです。死亡後の病理解剖では、脳がその形状を保てないほど軟化していたといいます」(前出・ジャーナリスト)

 ただ、感染経路については不明で、水道水は問題なかったという。また、感染したのが冬だったこともあり、川や湖で泳いで感染、という経路は考えにくい。結局、いまだ感染経路は明らかになっていないが、

「このアメーバは45〜46度のお湯の中でも生息できるという報告があることから温泉が疑われました。また、水田のようなところもアメーバにとって格好の生息地です。とはいえ、水田にいて鼻に水が入るという確率も高くないことから、経路の認定が難しいのです」(前出・ジャーナリスト)

 アメリカでは湖で泳いでいた子供が感染して死亡している。とはいえ、その湖では他に50人以上の子供と家族が泳いでいたが、感染したのはその子供1人だけだった。

 脳喰いアメーバの生態と感染については、まだまだ不明なところが多いのである。

(灯倫太郎)

ライフ