今年6月の開催で12回目を数える「甲賀流忍者検定」。試験が行われる滋賀県・甲賀は、伊賀と並ぶ忍者発祥の地として有名ですが、その名のとおり、甲賀流忍術などの知識が学べる検定です。
それでは実際に例題を見てみましょう。
〈問1〉そば粉や白米、ハト麦などで作られていたとされる、忍者(あるいは兵士)の携帯用保存食は①芋茎縄、②弁慶飯、③飛飯、④兵糧丸のうちどれ?
〈問2〉安土桃山時代の甲賀忍者の一人で、織田信長を火縄銃で狙撃した“鉄砲の名手”といわれている人物の名前は①杉谷善住坊、②石川五右衛門、③那須与一、④大宮景連のうち誰?
実際の問題は、四肢択一や記述式などで出題されます。例題の答えは〈問1〉が④、〈問2〉が①となっています。
試験レベルは初級・中級・上級に分かれており、受験料は一律3000円。前述したとおり、試験会場は基本的には甲賀市ですが、まれに東京で行われることもあります。実際、私が初級に合格した際の会場は、甲賀忍者が仕えた徳川家康と縁の深い東京の増上寺でした。
試験会場では歴史学者のトークショー、手裏剣投げ体験や忍者コスプレ企画、物販なども開催され、かなりにぎわっていましたね。
さて、忍術と聞くと、手裏剣術や忍び鎌を用いた戦闘術を思い浮かべるかもしれませんが、特に忍者たちが実力を発揮したのは諜報活動。情報収集のための人心掌握術などは、現代のビジネスにも活用できると私は思っています。
例えば、有名なところでは「喜車(きしゃ)の術」があります。相手にお世辞やホメ言葉を送って喜ばせ、人の心を動かすというものです。営業マンのセールストークや上司へのご機嫌取りには欠かせないスキルですよね。
あるいは、「隠形(おんぎょう)術」というのもあり、これは敵の視界から消えて逃げるためのスキル。苦手な上司に残業を頼まれそうになった時に使えるかもしれません(笑)。
もちろん、これらの忍術が実際に存在し、使用されていたのかという議論はありますが、いずれにせよ、知っておいて損はないテクニックでしょう。
現代に残る数少ない忍術書の一つに「萬川集海」(1676年)がありますが、なぜ門外不出の秘術が外部に漏れるリスクを負ってまで、この本を残したのでしょうか。
一説では、徳川時代に忍者の子孫が、
「この本に甲賀流忍術のノウハウや歴史が書かれています。私たちはこんなにも優秀な組織なんです。だから身分を上げてください」
と幕府にプレゼンするための資料として使ったから、という話もあります。
この検定は、認定証が巻物になっている点もユニーク。人心掌握にたけた「現代忍者」のお墨付きを得れば、プレゼンにも自信を持って臨めるかもしれませんね。
(すずき・ひであき)