「車ハッキング窃盗団」元締めが最先端手口を不敵暴露(2)中古部品か産業廃棄物として…

 ここで気になるのは、窃盗団が使用する発信機の入手経路だが、

「例えば、アメリカの通販サイトなんかで堂々と売られているね。レクサス用のモバイルバッテリー型の最新機種は、80万円。車のGPSを遮断する『ジャマー』と呼ばれる装置も10万円で買えちゃう。仕入れ先によって金額の表記がユーロやルーブルに変わるから、俺は仮想通貨で支払っている」(元締め)

 そのサイトにアクセスしてみると、スペアキーを不正に複製する「コードグラバー」の最新機器なども販売されていた。しかも、懇切丁寧な「実演動画」のリンクまで張られている。

「ここで買ったデバイスを横流しするだけでも、いい儲けになる。仲間の中国人は3倍の値段を付けて日本人に売りつけているよ」(元締め)

 さて、まんまと盗み出した高級車はまず、海沿いの資材ヤードのようなところに到着する。元締めが「その先」を明かす。

「関東の場合は千葉と茨城がメイン。ここで車を細かくバラしてから正規の手続きを経て、海外に輸出する」

 確かに盗難車そのままでは、輸出する際にバレてしまう。そこで中古の自動車部品、あるいは産業廃棄物という形にするという。元締めが続ける。

「表向きは自動車整備工場として運営しているからバレないし、設備も十分。盗みと解体は従業員として雇っているベトナム人やフィリピン人に任せている。いずれも農業実習生をリタイアしたり、オーバーステイしている者ばかりだ。彼らが盗んできた車はまず、俺が市場価格の5分の1で買い取ってやる。故郷に大金を送れるから、喜んで働いてくれるよ」

 元公安警察で、外国人犯罪に詳しい勝丸円覚氏は、

「解体されたものはコンテナ船で運ばれ税関を通過しますが、そもそもバラバラに分解された部品を盗品かどうかチェックするのは難しい。車両識別番号で管理されている車体でない限り、スルーされてしまうでしょう。そのままアラブ首長国連邦やマレーシアに輸出されてしまいます」

 そして現地の工場で再び組み立てられた車を、中古車として販売。これがひととおりの「工程」である。

「完成品を東アジアやアフリカに輸出する。エアコンの効きがいいから、中東・アフリカ地域では〝砂漠のオアシス〟と評判が高い。特にケニアや南アフリカのような右ハンドルの地域での人気は絶大。物価が安いはずなのに、日本と同じ市場価格で売れちゃう」(元締め)

 こうした窃盗団は、全国に百団体単位で潜伏。このやりたい放題を放置しておくしかないのか。

「さすがにシャッター付きのガレージやタワーマンションの駐車場でガチガチに囲われていると仕事はできないし、30〜40万円かけてCANインベーダー対策に特化した最新のセキュリティープログラムをインストールされると盗めないね。あとはハンドルロックやタイヤロックの防犯対策を二重三重に施された車は面倒なので後回しにするか、諦めるかな」(元締め)

 今すぐ対策を講じないと、もしかすると明日にも‥‥。

*「週刊アサヒ芸能」10月28日号より

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