飲食不況で中古市場にあふれる「業務用厨房機器」、家庭で使う際の注意点は?

 昨年からコロナ禍の客離れ、営業時間の短縮要請などで苦境に立たされた飲食業界。帝国データバンクによれば、昨年1月から11月までの飲食店の倒産件数は増加傾向にあり、特に居酒屋や日本料理店の倒産が過去最多を記録しているという。

 それに伴い、こうした飲食店で使われていた厨房機器が、リサイクル店などに大量に持ち込まれている。都内でリサイクルショップを経営するオーナーが語る。

「飲食店から『客が減って閉店するかもしれないので、見積もりだけでもして欲しい』といった問い合わせが増えだしたのは今年4月ごろ。夏になると買取依頼が急増しはじめ、9月ごろには業務用中古機器の仕入れが前年比の5割増しになりました。そのため、急遽新たに倉庫を借りて対応していますが、この流れは今後もしばらく続きそうですね」

 同社では、業務用機器を自社の再生工場に持ち込み、傷んでいる部品を交換、洗浄した後、自社のHPや「ヤフオク」「メルカリ」などで販売しているが、

「人気なのが、業務用フライヤーやプロ仕様のたこ焼き器、焼き芋製造マシンなどで、特に問い合わせが多いのがフライヤー関係ですね。コロナの影響で、テイクアウトが主流になったこともあり、業態を変えてでも、何とか今を乗り切っていこうと考える飲食店のオーナーが増えているということでしょうね」(前出・リサイクルショップ経営者)

 さらに、プロ仕様の「業務用機器」が低価格で購入できるとあって、一般ユーザーからの問い合わせも急増しているという。

「プロ仕様の厨房機器は家庭用に比べ性能がいい。それが定価の半額以下、下手をすれば3分の1程度という破格の値で手に入るんですからね。さらに、大半がつい最近まで実際に使われていたものなので、中古とはいえ、使用するうえでは何ら問題はありません。なので、きちんと吟味して購入すれば、かなりお得な買い物だといえるでしょうね」

 こう話す前出の経営者に中古の「業務用機器」を購入する際のポイントを聞いてみた。

「よくある失敗談が、購入したはいいが、寸法が合わずにキッチンに収まらなかったというケース。多くの場合、業務用機器は家庭用に比べサイズが大きいので、設置場所の寸法だけでなく、搬入経路もしっかりとチェックすることをおすすめします。また、なかには電気・ガスの規格・仕様が合わず、使えないといったトラブルもよく耳にします。電源コードには単相と三相があり、同じガスでも、都市ガス用とプロパンガス用で互換性はありません。また、電気には周波数やワット数の問題もあるので、購入の前には必ず事前のチェックは怠らないよう心がけましょう」

 また、新古品や展示品をのぞき、ほとんどの中古機器は、メーカー保証が切れている状態なので、もし故障してしまった場合は、販売店やメーカーと直接やり取りをしなくてはいけない。また、季節によって値段が大きく変動することも頭に入れておくべきだという。

「たとえば夏場なら、電気おでん鍋の価格が下がりますし、冬場なら、かき氷機を安く買うことが出来ます。こうした市場の動きを捉えておけば、さらに安く購入できる可能性があるということ。メリットとデメリットを考えながら、賢く購入してください」(前出・リサイクルショップ経営者)

 テイクアウトなどへの業態変化で生き残りをかける飲食業界。そして、さらなる飲食不況で、在庫過多となった「業務用機器」を使う家庭が急増するかもしれない。

(灯倫太郎)

ライフ