コロナパニックによる収入激減で生活困難に陥るとの悲鳴が全国から発せられる中、九州・宮崎県では1億円もの金を着服して行方をくらませるトンでもない銀行員がいた。コトが明るみに出るや、逃亡すること120日間。そして最後は哀れな姿で‥‥。その潜伏生活と1億円の行方を追った。
3月14日、宮崎県宮崎市内のコンビニエンスストアで「91円の炭酸水」を万引きして逮捕されたのは、住所不定・無職の福原啓聡(ひろとし)容疑者(46)だった。
しかし、ただの万引き事件と軽く見ることなかれ。実は宮崎銀行の審査部などに勤務していた元行員で、10人の顧客から預かった約1億1460万円を着服し、行方をくらませていた男だったのだ。地元記者が解説する。
「昨年の11月12日に外部から情報提供があり、銀行内部で調査した結果、11年11月から19年11月までの8年間にわたり、顧客の融資金を着服していることが発覚しました。福原容疑者は11月19日から病気を理由に欠勤していて、その後、消息がつかめない状況の中、12月2日には複数の顧客から預金をダマし取っていたことも判明した。宮崎銀行の発表によると、20年1月10日付で懲戒解雇処分になっています」
はたして、どのような方法で顧客の金を懐に入れていたのか。被害者の一人、A子さんが涙を浮かべながら打ち明ける。
「福原さんは私が働いている飲食店の常連客でした。店内で雑談を交わすほどの親しい間柄で、LINEでやり取りをする機会もしばしばありました。そして18年10月に『会社の福利厚生で利率4%の特別な定期預金がある』と勧誘を受けました。ちょうど長年の貯金を資産運用しようと考えていたタイミングだったので……」
この時、福原容疑者は「勤続15年以上の行員の家族や取引実績のある企業向けで本部行員紹介限定の定期預金」だとデタラメな話でA子さんの気を引き、まず「家族扱い」にするため、自身の口座に500万円を振り込むように指示した。
「お金を振り込んだあと、銀行の名前が入った預かり証を渡されました。定期的に利息も振り込まれていたので、『まさか宮銀がウソをつくなんて』疑いを持つことはありませんでした」
福原容疑者を信用しきっていたA子さんは、その後、6回にわたって計4100万円を振り込んだという。
しかし19年12月、利息が振り込まれなくなると同時に連絡も途絶えてしまう。不審に思ったA子さんが宮崎銀行に問い合わせたところ、ようやく事の重大さに気づいたというわけだ。
福原容疑者はその直前の昨年11月、すでに行方をくらませていた。ところが今回の逮捕時、1億円以上を着服した男とは思えない身なりだったという。
「逮捕されたコンビニは、福原容疑者の勤め先から1キロも離れていない場所。灯台下暗しもいいところですね。そこで万引きしてバレると、ダッシュで逃走。店員が300メートルぐらい追いかけたところで力尽きたようです。その時の所持金はわずか数十円で、ホームレスのような外見だったそうです」(前出・地元記者)
あまりにあっけない逮捕劇だった。
※「1億円着服男」(2)に続く