坂本龍一さん逝去「戦場のメリークリスマス」誕生秘話と演奏しなかった10年間

 音楽家の坂本龍一さんが3月28日、がんのため死去した。4月2日、所属事務所がHPで報告。71歳だった。

 坂本さんは1978年に結成された音楽グループのイエロー・マジック・オーケストラ(Y.M.O.)で活躍。テクノポップという新ジャンルの音楽を築き、「ライディーン」など数々のヒット曲を世に出した。83年には大島渚監督がメガホンをとった映画「戦場のメリークリスマス」に俳優として出演し、音楽も担当。「戦メリ」とも呼ばれる同作メインテーマ曲「Merry Christmas,Mr.Lawrence」は、坂本さんの代表曲の1つとして知られる。

 名曲「戦メリ」はいかにして生まれたか。2020年に都内で行われた、映画の未来を切り拓く若手獲得に贈られる「大島渚賞」第1回の上映会&トークショーに審査委員長を務める坂本さんが出席。「戦場のメリークリスマス」の秘話を語った。

 大島監督が坂本さんのオフィスに出向き、俳優としての出演のオファーを出したとき、坂本さんは「喜んで」というつもりだったのが、「音楽は僕にやらせてください!」と言ってしまったそうだ。快諾してもらえたものの、映画音楽は初体験。ロケ先の南の島ではインスピレーションは全くわかず、東京に帰ってからゼロの状態で始めたという。
 
 だが、「新潮」の22年7月号で、「戦メリ」のメロディはわずか30秒で思いついていたことを告白。ピアノの前に座り、無意識に目を瞑って、次に目を開けた瞬間にはメロディが楽譜上に見えていたと明かした。

 しかし、坂本さんは「戦メリ」を坂本は約10年間弾かない時期があった。
 
「17年5月放送のラジオ番組『RADIO SAKAMOTO』(J-WAVE)に出演した際に明かしました。坂本さんはいつも『戦メリ、戦メリ』と言われるので、それに反抗して長い間、ライブなどで弾かなかったそうです。でも、ある洋楽アーティストの日本公演に観客として訪れた際、お目当ての曲がなかなか披露されない。ようやくアンコールで歌ってくれたときはうれしかったと同時に、ずっと『戦メリ』を弾かなかったことを反省。自分が好きな曲を待っていたように、ファンも『戦メリ』を待っているのだと。それからは『戦メリ』を弾くようにしたそうです」(音楽ライター)

 大ヒット曲を持つがゆえ、人知れぬ悩みもあったようだ。

(石田英明)

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