カタログ通販大手の千趣会が9月20日、通販カタログ「ベルメゾン」と「花笑むとき」の秋号を自主回収することを明らかにした。当該カタログにはナチス・ドイツに関する書籍を、撮影の小道具として使用した写真が掲載されていた。
問題とされた写真は、同社製品のジャケットを紹介するページにあった。古本が並ぶ本棚をバックに、秋の装いで微笑むモデル女性の写真には「美術書が充実する古書店へ」「わくわくする本が見つかったら、一人での帰り道も楽しい」とポエムが添えられているのだが、この“わくわくする本”が不適切だった。モデル女性が右手に持つ本の表紙にはイタリア語で「L’Architettura del Terzo Reich(第三帝国の建築)」という表題が書かれており、ナチス・ドイツ関連の書籍であることが分かる。この書籍は、かつてのナチスの支配体制を賛美する内容ではないものの、ナチスが建築に及ぼした影響について論じた書籍をイタリア語訳したものだった。
同社は当該カタログを見た利用者から、「モデルがナチス・ドイツと関連する書籍を持っている」と指摘を受け、調査の末に自主回収を決定。20日には会員に向けて謝罪のメールを送信している。会員に向けた謝罪メールでは「弊社は、旧国家社会主義ドイツ労働者党、及びそれに関連する組織等を一切支持しておらず、本件で被害に遭われた方々を傷つける意図もございません」と弁明している。
この対応にネット上では《この本に『わくわくする』はメッセージ性出ちゃうし全回収も仕方ない》《おしゃれに見えるってだけで確認せず使っちゃうから…企業イメージに響くし謝罪と回収は当然》《ベルメゾン偉いな、100点の対応》と、自主回収に納得する声も多い一方で、《ナチスの思想は悪くとも、建造物が悪いわけじゃないし、これバッシングは世間が厳しすぎない?》《研究書籍なんだし別に構わないのでは》《誤解を招く表現に説明は必要だけど、謝罪文はさすがに過剰すぎる》《回収騒ぎはやり過ぎ》と、対応の過剰さを指摘する声も聞かれる。
悪意がなかったにせよ、また、書籍の内容がナチスの思想を称賛するもので無かったにせよ、些細なことで炎上騒動となってしまう昨今のマーケティングにおいて、一連の謝罪ムーブは賢明な判断といえよう。
(浜野ふみ)