宇宙よりも魅力?「海底探査」に巨費を投じる世界のセレブたち

 前澤氏にホリエモン、金持ちは宇宙を目指すもの…と思いきや、世界を見れば、それは一部の傾向でしかないことが分かる。

 10月18日、太平洋戦争中の1942年6月5日にミッドウェー海戦で撃沈された日本の巨大航空母艦「加賀」が、アメリカ・北西ハワイ諸島の海洋保護区で、水深約5400メートルの海底で直立した状態で沈んでいるのが発見されたというニュースが日本に伝えられた。発見したのは、昨年10月に65歳で亡くなった、マイクロソフト共同創業者のポール・アレンが遺した調査チームだという。

「アレンは08年から2隻の大型ヨットを『オクトパス』と呼ばれる海洋調査船に改造して、第二次世界大戦で沈没した軍艦の調査を行っていました。日本の艦船としてはこれまでにもあの戦艦『武蔵』、『比叡』や『山城』、『扶桑』と見られる残骸、重巡洋艦の『摩耶』、駆逐艦の『島風』を発見したほか、テニアン島に輸送したアメリカ海軍の重巡洋艦の『インディアナポリス』やパールハーバーで沈んだ空母『レキシントン』、イギリスの戦艦『フッド』なども発見しています」(ITジャーナリスト)

 アレンの死後、この活動はアレンがマイクロソフトを退社後に設立した財団に引き継がれているという。

「アレン以外でもアマゾンの共同創立者のジェフ・ベゾスは、月に着陸したアポロ11号のロケット・エンジンを大西洋の海底、約4300メートルから引き揚げています。ベゾスの場合は、1万年の時を刻む『1万年時計』の製作プロジェクトに寄付をしたり、個人出資の宇宙開発プロジェクトも手掛けるなど、多岐にわたっています」(同前)

 ちなみに、ほかに海底探査に夢を傾ける有名人としては、映画『ターミネーター』や『アバター』、そして『タイタニック』の監督として有名なジェームズ・キャメロンもいる。

 ところでこの海底探査、日本でも徐々に広がりつつあるという。

「07年に日本の海洋政策を積極的に進める目的の海洋基本法が成立し、09年にはユネスコの水中文化遺産保護条約が発効されたことで、新たな学問分野として注目を集めています。なんでも世界中には300万隻もの沈没船が未探査なまま眠っていて、日本の近海にも遣唐使船や南蛮船などの歴史的な船が多数沈んでいるはずです」(全国紙記者)

「未来」のSFな話だけでなく、「歴史」のロマンにも金を使う。なんとも粋な話ではないか。ノブレス・オブリージュの伝統? そうなのかもしれない。なんにしても海外の金持ちはやはりスケールが違う。

(猫間滋)

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