完全タイブレーク制を導入する日本高野連に続いて、社会人野球も「ルール変更」だ。
社会人野球の大会を運営する日本野球連盟(JABA)が実証実験として、「7イニング制の試合適用」を発表した。3月4日から全国9地区約40大会において実施されるという。
目的は「試合時間の短縮」。メジャーリーグで導入される「スピードアップ・ルール」も参考にして、投球時間の間隔を走者ナシで12秒以内、走者を背負って20秒以内とし、これを超えると「1ボールカウントが加算される」などのルールが新たに設けられた。
ただ、こうしたルール変更に、現場からは不安の声も出ているという。
「7イニング制の噂は聞いていたので、導入そのものには驚きませんが、7回だと、野球のスタイルが攻守ともに変わりますね」(都内チームスタッフ)
まず、7回終了なら、9イニングで4回まわってきた打席数が「3回」になる。とくに下位の打順に入った選手の打席数が減る。さらに主軸バッターを多く打席に立たせるため、4番バッターを3番に換えることも考えなければならない。主軸が3番になれば、送りバントや右方向への進塁打を得意とする2番タイプを省き、従来の広角に打てる3番タイプを2番に置く打順となる。また、投手の起用法も変わってくる。
「先発、セットアッパー、クローザーの分業制も見直されます。先発からいきなりクローザーに継投する場合もあれば、7回なら先発投手が1人で投げ切るケースも多くなるでしょう」(前出・都内チームスタッフ)
牽制球も「3度目で成功しなければ、ボーク」となるため、投手対打者の「1対1の対決の様相」も濃くなるだろう。
「7回なら体力的負担も減るので、投手はストライクゾーンでの勝負に徹し、打者もフルスイングしてきます。盛り上がる要素もありますよ」(アマチュア野球担当記者)
攻撃的な打順、完投、1対1の対決。若い世代が好む要素があるのは確かだ。
今のところ、高校野球やプロ野球には7回制の話は出ていない。今回も実証実験なので、JABAは2023年シーズン終了後にその効果を再び協議することになる。とはいえ、社会人野球界で7回制が定着した場合は、「野球のようで野球ではない新スポーツ」として捉えられることになるのではないか。
(飯山満/スポーツライター)