ひとたび事故を起こせば人命に関わる大惨事を招く可能性が極めて高い飛行機。それだけにパイロットの責任は重大だが、時には発作などの突然の体調不良が事故の引き金となることも。
実際、ルーマニアで乗員乗客60名全員が亡くなった95年のタロム航空機事故は、離陸直後に機長が心臓発作に襲われたことがのちに判明。他にもフライト中に突然の意識障害を起こした事例は数多く報告され、なかには客室乗務員や乗客が代わりに操縦桿を握って難を逃れたというケースもある。
5月10日、米フロリダ州の上空で飛行中のセスナ機の機長が失神。しかも、旅客機のように副操縦士はおらず、同乗しているのは乗客の男性1人だけ。それも飛行機の操縦経験などまったくない完全な素人だったという。
絶体絶命の状況だったが、男性は同州の航空管制等に連絡。このとき幸運にも航空管制官のひとりが認定飛行教官の資格を持っており、操縦方法をレクチャー。最も難しい着陸を成功させ、一連の出来事は米国のみならず日本をはじめ世界各国で報じられている。
「当日は天候が晴れで視界良好、風もあまり吹いていなかったことが幸いしました。それでもいくら教官のアドバイスを受けながらとはいえ、操縦に関する基礎知識のない人が一発で着陸を成功させるのは至難の業。フライトシミュレーターのゲームでもそう簡単にはいきません」(現役民間機パイロット)
ネット上でも世界中で男性を絶賛する声が相次いだが、日本ではなぜか《コナンでも同じシーンがあった!》など名探偵コナンと絡めたコメントが殺到。実は、04年公開の映画『名探偵コナン 銀翼の奇術師』でも似たようなシーンがあり、ヒロインの蘭姉ちゃんこと毛利蘭が機長に代わって着陸させている。
「その作品は数年前に子供とDVDで観ました。でも、管制塔に機体が接触し、エンジンが脱落して爆発炎上。最終的に港のふ頭に緊急着陸しています。手に汗握る展開でしたが、実際にあんな状況になったら我々パイロットでも厳しいでしょうね(苦笑)」(同)
“事実は小説よりも奇なり”とは今回の出来事のようなことを言うのかもしれない。