地震多発のトカラ列島は、日本一アクセスが不便な島だった?

 最近、各地で群発地震が続いているが、なかでもよく耳にするのが「トカラ列島」。九州本土と奄美大島の間に点在する島々で、行政区分上は鹿児島県十島村となる。だが、いずれの島も観光地化されているわけではなく、名前を聞いてもピンと来ない人が多いだろう。

 5つの無人島を含む、12の島から構成され、人口はすべて合わせても約750人。これは同じく島しょ群の三島村に次いで、鹿児島県の自治体では2番目に少ない。

 以前、筆者はプライベートでこの島を訪れたことがあるが、トカラ列島には空港がなく、外部との唯一の交通手段は村営定期船の「フェリーとしま」のみ。しかも、週2〜3便しか就航しておらず、秋の台風シーズンなどは一週間以上欠航が続くことすらある。

 深夜23時に鹿児島港を出航し、最も人口の多い中之島に到着したのは翌朝6時。東京都杉並区とほぼ同じ面積を持つトカラで一番大きな島だが、それでも人口は160人程度。日中、島民や車とすれ違うこともほぼなく、野生のヤギを見かけることのほうが圧倒的に多い。商店も島の中心部に1軒あるだけ。飲食店も見られなかった。

 そんな場所なので島を訪れるのは工事関係者や釣り人を除けば、筆者のような変わり者の旅行客くらい。ただ、別名「トカラ富士」と呼ばれる御岳の頂上からの眺めは最高。活火山なので島には温泉もあり、島民たちの数少ない憩いの場となっている。

 また、ネオンは一切ないので日が沈むと真っ暗になるが、天然のプラネタリウムのような満天の星空を眺めることができる。九州最大級の反射望遠鏡のある中之島天文台(※要予約)もあり、天体観測にも最適だ。

 南北160キロに及ぶトカラ列島は各島が固有の歴史を持ち、文化や風習も似ているようで異なる。例えば、最も南の有人島の宝島は17世紀の海賊キャプテン・キッドが残したとされる財宝伝説がある島としても有名だ。

 アクセスは全国の離島の中では小笠原諸島と並ぶ不便さだが、これだけ手つかずの自然が残っている島も今どき珍しい。秘境好きの人ならきっと満足できるはずだ。

(高島昌俊)

ライフ