「黒五」の中でもとりわけ強力なのが、稲の原種であり2000年以上前から食されていた黒米だという。
「品種改良される前の古代食だからいいのです。野生の植物のパワーが全体にみなぎっています」(猪股氏)
黒米のアントシアニンと呼ばれる色素は赤ワインなどに含まれるポリフェノールの一種で、多量に含まれた食材は色が黒くなる。これが「若返りのもと」だというのだ。
この「黒五」の成分と効用に早くから着目し、研究を進めてきた旭川医科大学のレポートによると、
〈アントシアニンには強い抗酸化作用があり、すなわち黒米には精製した白米の約10倍、玄米の約5倍の抗酸化効果がある〉
「抗酸化作用」とは、ストレスや紫外線などで過剰に発生してしまった老化を進める「活性酸素」の発生を抑える力のこと。白米はもとより、玄米にもこの野生のパワーを持ったアントシアニンは含まれていない。まだ人間が手を加える前の荒々しさが老化を抑えるとされ、農林水産省も「黒米には血管の老化を防ぐ効果がある」と認めている。要するに、動脈硬化や高血圧の防止、改善に一役買うというわけだ。
先の旭川医科大学の研究チームが、「黒五」を含む飼料を、40匹のラットに30日間にわたって与える実験を試みたところ、摂取したラットは摂取しないラットと比較して、過酸化脂質値が低下した。
「過酸化脂質値とは、中性脂肪やコレステロールなどの脂質が活性酸素によって酸化したものを指します。これはガンや動脈硬化を引き起こす要因となります」(医療ジャーナリスト)
さらに同医科大学の別のラット実験で「黒五」を含む水溶液を一定期間与えたところ、血圧を10%抑制、血糖値も降下する結果となった。医療ジャーナリストが続けて解説する。
「つまり、アントシアニンなどを含む黒い食材、『黒五』の成分は『血管の掃除屋』と言うべきものであり、血圧を最適値に矯正する働きがある。と同時に、糖尿病予防にも役立つものだということです。ちなみに黒米は、玄米に比べても食後の血糖値の上昇が緩やかでインスリンを出す力にも負担がかからず、結果、糖尿病になりにくくなる。さらには吸収速度がゆっくりであるため空腹感も感じにくく、ダイエットにもいいと言われています」
酸素や栄養分を全身に運び二酸化炭素や老廃物を回収する血流が滞れば、たちまち体にはトラブルが発生する。ただでさえ現代日本人はストレスがたまる人間関係、洋風化・肉食化する食生活などにより便通などの新陳代謝がスムーズにいかず、体内、ことに血管に過剰な有害物質が残るようになってしまった。汚れた血管は万病のもとなのだ。家康を守る忍者たちも、すでにそのことを知っていたのか─。