四国の東南部、阿波海南~甲浦を結ぶ第三セクターの阿佐海岸鉄道が国内外の鉄道業界から大きな注目を集めていることをご存じだろうか? この路線、もともと気動車が走っていたが、昨年11月末で運行が終了。現在は代行バスによる営業が続いている。
しかし、それは路線廃止を前提としたものではなく、前例のないまったく新しい交通システムを導入するためだった。それがデュアル・モード・ビークル(DMV)と呼ばれるものだ。
一見、ボンネットバスのようなデザインのDMVだが、これは鉄道として線路の上を走るだけではなく、通常のバスとして公道の走行も可能な、いわばハイブリッド列車。水中と公道の走行ができる水陸両用車というのがあるが、これが水中ではなく線路の上にかわったと思えばイメージしやすいかもしれない。
「このDMVはJR北海道が開発を進めていましたが、管内での車両事故が相次いだこと、さらに資金的な問題もあって導入を断念。ただし、鉄道車両に比べてコストが安く、路線のインフラ整備も最小限に抑えられるという利点があります」(鉄道ジャーナリスト)
ただし、見た目はほぼバスのため、定員も23名(運転手1名含む)と一般的な列車に比べると輸送能力は大幅に低い。過疎地域で以前から利用客が少なかった点などを判断したうえでのことだと思うが、道路走行が可能なため、地元の観光スポットに乗り換えなしに直接アクセスできるというメリットもある。
「バスモードで阿波海南文化村や宍喰温泉などにも行ってもらえるので、観光客の利用増加も期待されています。また、土日祝限定ながら甲浦駅から約40キロ離れた室戸岬までの運行も予定されており、週末は混雑しそうです。それと阿波海南駅と甲浦駅にはバスモードと鉄道モードを変換を行う〝モード・インター・チェンジ〟と呼ばれるスポットが設けられており、これを見たいという鉄道ファンも全国から訪れそうです」(同)
運行開始は年内の予定だが、詳しい時期などは現時点においては未定。鉄道の歴史を大きく変えるだけに導入が待ち遠しい限りだ。
(高島昌俊)