国民の9割が勘違い!1000年前から行われていた「姫始め」の本当の意味とは?

 正月には仕事始めや初詣のような「○○始め」、「初○○」などの言葉が数多く存在するが、なかでも少し卑猥な響きがあるのは「姫始め」。もしかしたら日本国民の9割以上が、年明け最初の性的な行為(=秘め事)を指す言葉と思い込んでいるかもしれない。だが、これは後付けで広まった意味だとされている。

 もともと姫始めは千数百年もの昔から毎年1月2月に行われていた儀式なのだそう。ただし、現存する資料がなく具体的にどんなことをしていたのか今もわかっていない。

 そのため、内容については諸説があり、有力なのが「姫飯(ひめいい)を食べる」というもの。これは柔らかく炊いたご飯を意味し、昔は正月におこわのような硬い米を食べる風習があり、これらの料理を強飯(こわいい)と呼んでいた。要するに姫飯を食べることは通常の生活に戻ること、すなわち正月の終わりを意味していたというのだ。

 ほかには乗馬を意味する「飛馬(ひめ)始め」、火や水を使う「火水(ひめ)始め」、縫物を行う「女伎(ひめ)始め」といった説も。だが、いずれも推測に過ぎない。

 ちなみに姫始めが男女のまぐわいを表す意味として認識されるようになった時期は定かではないが、少なくとも18世紀にはすでに使われていたようだ。江戸後期の国学者、藤原彦麿の随筆「傍廂(かたびさし)」には次のような一説がある。

《初春のひめはじめは、諸説まちまちなれど、皆とるに足らず、むかしより世俗のいひ来れる男女交合の始なり》

 国学者なら古い礼儀作法、習わしには詳しかったはずだが、諸説があることを認めながらも「男女交合」と言い切ってしまうところはスゴい。でも、結果的にこれがあたかも真実として話が広まってしまい、姫始めを男女の営みだと思い込んでいる人が増えてしまった可能性は大いにあるだろう。

 言葉には時代によって昔と意味が異なる場合も珍しくない。むしろ、その年の最初の男女の“アノ行為”だと解釈したほうが、ロマンがあるのかもしれない。

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