任天堂の大株主はジャパンマネーからオイルマネーに。同社の大株主は任天堂を除けば、日本の年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が第2位の大株主だったが、2月17日にサウジアラビア政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がGPIFを抜いて第2位の大株主に浮上していたことが判明した。
「PIFは昨年から徐々に任天堂株の保有割合を積み増していましたが、13日にその保有割合が8.26%になって、GPIFの7.71%を上回ったことが株式取得に関する報告書で17日に判明しました。任天堂にオイルマネーと聞けば不釣り合いに聞こえるかもしれませんが、実は珍しい話ではありません。PIFはこれまでにもネクソンやカプコン、コーエーテクモHD、東映など、日本のゲームやエンタメ企業の大株主に名前を連ねて投資を進めていました」(経済ジャーナリスト)
サウジアラビアは現国王の息子のムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が実権を握るとされる。37歳と若く、日本のアニメやゲーム好きとしても知られる。皇太子が設立した財団は、「餓狼伝説」「龍虎の拳」などで知られるゲームメーカーのSNKのほとんどの株式を保有していて、実質的には皇太子がオーナーのようなものだ。そしてサウジは皇太子の下で16年に脱オイルマネーの経済を模索する「ビジョン2030」という経済改革計画を掲げており、そこではエンターテインメント産業が柱の1つとされていて、同国にはエンターテインメント庁という役所まである。
となると日本はゲームやアニメといったコンテンツの宝庫なわけで、自然と大株主にオイルマネーが顔を出すというわけだ。
「サウジアラビアでは約30年間、公共の場でのエンタメ公開は禁止されていましたが、17年に解禁。同時に映画館や劇場が次々とでき、そこに出入りする男女別の入口設置が廃止されたり、女性の運転免許の取得が可能になるなど、エンタメ産業への解放が行われてきました。すると莫大な資本をバックに、海外大物アーティストの公演やF1の誘致が行われるようになり、ジャパンアニメやゲームも流入。昨年5月から2カ月間、サウジで開催された日本のアニメイベントでは、ガンダムや鬼滅の刃といった代表作の出展はもちろん、ハローキティのショーやアニソンのライブが行われて大盛り上がり…なんて状況になっているんです」(同)
サウジのエンタメ産業への出資は日本に止まらず、世界最大のeスポーツ運営会社を買収したり、今年1月には韓国のIT大手「カカオ」のアニメ部門にも約1300億円の出資を公表するなど、世界的なレベルで広がっている。日本のアニメーターやゲームクリエイターが目指すは中東、というのが近く当たり前になるかもしれない。
(猫間滋)