もともと生活用品メーカーだったが、ここ10年で家電部門が急成長し、国内の主要メーカーの一角に割って入るほどの躍進を遂げたアイリスオーヤマ。機能を絞ったシンプル家電を中心に競合他社より安い価格帯で販売。人気の要因となっていたが、「自助努力だけで価格を維持するのが困難」と6月から10%以上順次値上げすることが先日発表された。
「国内外での半導体不足や、原油価格高騰に伴いプラスチック部品をはじめとする原材料が値上がりしていること、さらには急速な円安などがその大きな原因です」(家電ライター)
だが、これは同社だけの話ではない。パナソニックや日立グローバルライフソリューションズなどの大手メーカー、デザイン性と機能性に優れた家電で近年好調のバルミューダもすでに値上げに踏み切っており、家電業界全体の流れと言っていい。
「もともとアイリスオーヤマ製品の市場価格は、大手家電メーカーの3分の2程度。値上げ率に各社バラつきはあるものの、値段の安さというアドバンテージが失われたわけではありません。むしろ、4月から値上げしたメーカーが多い中、同社は後発。それだけギリギリまで状況を見極め、会社にとっても苦渋の決断だったのでしょう」(同)
なお、家電大手が4月以降の値上げを発表した際は3月に駆け込み購入する人が急増。今回も同様のことが5月末にかけて起きる可能性が高いという。
「例年なら今の時期は新生活シーズンがひと段落し、夏のボーナス時期まではあまり家電が売れないんです。でも、いくら他社より安いといっても10%増は家計にとって大きい。またアイリスの夏物家電のエアコンは人気があり、17年には品薄状態となり会社がお詫びのコメントを出したほど。今回も同じ状況が起きないとは限りません」(同)
ちなみに、値上対象は「家電製品」の他に、「ホーム・ハウスウェア」「ヘルスケア」「収納・家具インテリア」「ガーデン・エクステリア・ハード」「ペット用品・ペットフード」の6カテゴリーとなる。