アップルが採った「5G移行」出遅れ対策にiPhoneユーザーが安堵

 スマホの次世代通信規格の「5G」が、海外では2019年から商用サービスが開始、日本では2020年からの商用化が予定され、いずれにせよスタート目前とあって注目が高まっている。

「5Gになればデータの伝送速度が諸説あって数字にバラつきはありますが、20〜100倍にもなってより高度な情報を短時間で扱うことが出来るとされています。そのため、例えばARメガネを使って目の前に映し出される3D資料を使うことも可能で、もはやパソコンが要らなくなるでしょう」(経済ジャーナリスト)

 しかも、ソフトバンクなどは5Gの「本当の良さ」を活かすために完全な使い放題プランの提案を考えるなどしており、これまでのように通信制限の「ギガ死」に悩まされることもなくなって、ユーザーにとってはおいしい話ばかりなのだ。

 ところが、日本のスマホ利用者の頭を悩ます問題が横たわっていた。スマホのOSは、世界的に見ればグーグルのシェアが約8割と多数を占めるのに対し、日本ではアップルのシェアが5割以上と非常に高く、アップル天下なのだ。ところが、アップルは5Gの開発で大きく後れをとっていた。

 理由は、5Gに必要なモデム開発で最先端を行くクアルコムとアップルは裁判で争うという“不仲”で、後塵を拝するインテルと組まざるを得なかったからだ。だから、アップルの5G実現は2021年になるとの見方が強かった。サムスンやファーウェイがさっそく5G対応機をリリースする中、完全に後れをとっていたのだ。

 ところが朗報が舞い込んだ。アップルとクアルコムの間で和解が4月に成立したのだ。

 そもそものケンカの原因は、クアルコムが求める特許のロイヤリティの支払いをアップルが拒否していたことにある。2017年から続いていた裁判も、アップル側が折れる形でようやく終了し、両社は6年間の半導体供給を含む契約を締結。5G対応アイフォンの早期投入にメドが立ったのだ。この和解でアップル側が支払う金額は50〜60億ドル(1ドル110円とすると5500〜6600億円)と見られる。

「加えて、アイフォン1台につき8〜9ドルのライセンス料を約束したとの見方もあり、アップルにしてみれば出血大サービスなのだが、肉を切らせても骨だけは残したいアップル側の戦略との見方もあります。それだけ5Gの早期移行が生命線でもあるということです」(同前)

 スマホのOSの覇権を巡り相争ってきたグーグルとアップルの両社。和解前はグーグル・クアルコム連合がアップルを潰しにかかっているとの見方もあったが、当面はまたも両社がシノギを削るといった状況に落ち着いた模様だ。

(猫間滋)

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