「コロナ禍でジリジリとニーズが増えていることを実感しています。ワクチン接種が行われたとしても、この状況はしばらく続くでしょうね」
そう語るのは、地方都市でデリバリー型のピンク店を経営する男性だ。いわゆる夜の店を中心とした飲食店が時短営業を迫られて久しいが、以前はスナックなどで飲食を楽しんでいた男性客が、ホステス代わりに自宅へピンク嬢の派遣を依頼するケースが増加しているのだという。
「高齢の方を中心とした需要はコロナ禍以前からありました。そこそこ年齢がいった熟マダム系店舗の価格は概ね120分2万円程度ですので、価格的にスナックと勝負できるかというと微妙なラインなのですが、『足が悪い』『繁華街までは少し離れた土地に住んでいる』『わざわざ飲みに出るのが億劫』といった理由で少し金銭的に余裕がある層が利用されていた印象です。さすがに昨春はパタッと売り上げが落ちましたが、この冬はコロナに対する恐怖感が薄れたことと夜の店への風当たりが強くなったことで利用が増えています。コロナ禍が収束したとしても、“お気に入りの女性とまったり家飲み”というニーズはなくならないと思いますよ」
不要不急の外出、人との接触が良しとされないこの状況で、人目を忍び誰かと酒を飲みたいという男性の気持ちはわからなくもない。しかし、実際に派遣される女性側の心境はどうなのだろうか。前出の経営者は語る。
「タイミングによっては長時間お酒におつきあいした後に別の方の接客をしなければならない、というつらさはありますが、概ね好意的に受け入れられていますよ。女性からしてみれば肉体的な疲労がないのはありがたいでしょう。男性客も慣れてくると『来るときに酒を買ってきてくれ』なんておっしゃる方もいて、店としてはどこまで対応すべきか悩みどころではあるのですが……」
店によっては女性のプロフィール欄に飲酒可能かどうか項目を設けてわかりやすく表示したり、紹介文の中に「お酒が好き」などの文言を記載したりして、こうした「家飲み需要」を巧みに取り込んでいるという。休業・閉業に追い込まれる夜の店が増加する中、アフターコロナに定着するか注目したい。
(穂波章)
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