後遺症で損害賠償530万円!駿河太郎が起こした「激突事故」とドロ沼裁判の行方

「親の七光り」なんて陰口が薄れてしまうほど、活躍の幅を広げる駿河太郎。映画やドラマはもちろん、舞台にも立つなど俳優としての存在感は増している。好調な仕事の反面、私生活では不運が‥‥。「激突事故」をきっかけに、相手方から訴えられていたのだ。2年2カ月に及ぶ「ドロ沼裁判」の行方を追う。

「本件事故により長期間にわたって右足を引きずりながら生活することが続きました。日常生活での苦痛や不自由さから、たいへんツラい思いをしました」

「被告側の対応は真摯なものではなく、特に裁判所での主張は当初、被告の保険会社から受けた説明と完全に異なるもので、非常に腹立たしく思っています」

 これは、昨年11月28日に東京地裁で行われた民事訴訟裁判の法廷で述べられた原告の訴えだ。その中で「被告」として非難されているのが、実は俳優の駿河太郎(42)なのである。

 駿河を形容する際に「笑福亭鶴瓶(69)の長男」という言葉がよく使われるが、昨今の俳優としての活躍は父親を超える勢いだ。転機となったのは、11年に放送されたNHK朝ドラ「カーネーション」だろう。ヒロインの夫役に抜擢されたのを契機に、駿河は数々の作品に出演する。
 
 13年の大ヒットドラマ「半沢直樹」(TBS系)で親子共演を果たし、ついに鶴瓶と肩を並べる。最近では2期連続でNHK大河ドラマに出演。先頃、最終回を迎えた「麒麟がくる」では、戦国大名の筒井順慶役を務める一方、現在公開中の映画「ヤクザと家族 The Family」で、敵役のヤクザ幹部を演じるなど、主演ではないがストーリー上、重要な役どころを任されている。

 そんな駿河が訴えられたのは、自身が起こした衝突事故が原因だった。相手方から事故後の治療費や後遺症の慰謝料など約530万円の損害賠償を請求されているのだ。訴状によれば、提訴されたのが18年12月27日。実に約2年2カ月が経過しても、結論は出ていない。なぜ「ドロ沼裁判」となってしまったのか。

 改めて裁判資料を見ていくと、事故そのものの発生については、互いに争っている事実はなかった。警察は「過失運転致傷」と判断。事故後に作成された現場の見分状況書によると、事故発生は18年4月9日午後0時20分頃。駿河が運転する軽自動車と原告男性A氏(54)が乗る中型バイクの接触事故だった。

 原告と被告の双方が提出した書面からわかるのは、駿河が自宅ガレージへ車庫入れをしている最中に、後方をすり抜けようとしたA氏と激突したこと。ここまでは疑いようのない事実のようだ。

「アサ芸」取材班は事故発生と同じ時間帯に現場へ行ってみた。そこは、都内の住宅街でキレイに区画され、見晴らしのよい道路だった。生活道路と呼ぶべき場所で、交通量は少ない。センターラインはないものの、道幅は約7メートルあり、車とバイクが譲り合うには十分な距離があった。

 ところが不運にも、事故は起きてしまった。その責任と過失を巡って、駿河とA氏の主張は大きな食い違いを見せている。

 A氏側の弁護士が作成した訴状によれば、駿河が運転する車両は停止及び後方の確認はなく、ハザードランプで後続車に後退の合図もないまま、急に後退してきたとしている。そして、駿河の進路からA氏の進行状況を見通すことは可能であり、駿河側に100%の過失があると主張。A氏自身も法廷での尋問に「法定速度30キロで走行中、10メートル手前で相手の車がUターンするために動き出したと思ったのでアクセルを緩めたが、5メートルまで近づいた辺りで車がバックしてきた。ブレーキをかけたが間に合わなかった」と証言している。

 対して、駿河側は道路左に寄せて停止し、入庫のため角度をつけるべく右前方に進め、住宅街路を先占停止したのち、左転しながら後退したとしている。そうした車両の動きをA氏は確認していたのに、後方進路に強引に路肩からすり抜けをしたがために事故が起きたと主張。ドライブレコーダーの映像を証拠として提出している。そして、後方確認が不十分と評することは可能だが、先占した駿河にしてみると、追い越しを企てるバイクの想定は「はっきり言って非現実的。控えめに言っても容易ではない」として、代理人弁護士は「80%の過失相殺が相当」との論を展開した。

 ところが、この80%という数字にA氏は憤慨。陳述書の中で、駿河が契約する保険会社の担当者は当初、過失割合をA氏20%、駿河80%としていたと主張。この割合にも納得していないが、「裁判での主張が逆になっている」として、「腹立たしい」思いに駆られているというのだ。

 まさに、この点を巡って泥仕合の様相を呈していく。が、これはA氏が負ったケガの度合いについても同様である。

 事故直後に診た医師の診断書には「右肘関節打撲、両膝関節打撲傷、右足打撲、四肢挫傷により14日間の加療を要する見込み」とある。だが、訴状では、18年7月末まで通院したものの完治せず、右足指の腫れ、疼痛と可動域の制限などの後遺症が残ったと主張。後遺障害等級13級の10に該当すると訴えている。陳述書にも、A氏は事故時に右側に倒れて「バイクに右足を挟まれた」と記し、後遺症のせいで車の運転時にアクセルペダルを踏むと疼痛があると述べている。

 これに駿河側の弁護士が裁判で反論。「2度にわたり、自賠責の後遺障害等級認定を求めたが、いずれも不該当」とA氏の後遺症を否定。A氏は病院や整骨院などに3カ月以上、約90回通院したとしているが、「打撲なら通常は1~2週間」と指摘し、通院慰謝料も8万8000円を上回らないとしている。

 A氏側は通院に使ったタクシー代も請求したが、これも駿河側は「必要性が認められない」と論難している。細部にわたって意見が対立していることを考えれば、この裁判が長期化するのは当然と言えよう。

 今回の事故では、駿河が契約する保険会社が示談交渉をしている。実際に訴状で、保険会社から治療費などの一括対応として約86万円をA氏に支払う用意があったことが記されている。

 A氏は保険会社ではなく、駿河を訴えた。示談交渉を一任してきた駿河にしてみれば、巻き込まれたような裁判であろう。

 裁判の長期化、今回の事故について、駿河自身は何を思うのだろうか。「アサ芸」取材班は駿河の自宅を訪ねた。が、インターホンに出た家人は、

「今日は仕事で自宅に帰ってきません」

 改めて所属事務所にコメントを求めると、

「保険会社さんに法律的に適切な解決になるように伝えております」

 あくまで早期の解決を望んでいるようだ。

 一方、A氏の代理人弁護士に話を聞こうと連絡するも、「依頼者のことですので」と一貫してノーコメント。

 民事訴訟は途中で裁判官が和解を持ちかけることがある。ましてや、車庫入れと追い越しの最中に起きた事故だ。互いに、それほどスピードを出していないことは容易に想像がつく。何も剛速球を投げるように主張をぶつけ合わなくても済んだのでは‥‥。

 この長く続いた裁判も、まもなく終わりがくる。3月3日に、判決が下される予定だからだ。果たして駿河とA氏の双方が、ハマッてしまったドロ沼から這い上がってこられる結論が出るのだろうか。

※「週刊アサヒ芸能」2月25日号より

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